雑誌「チルチンびと」85号掲載 京都大原の山里に暮らし始めて
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7ません。ガーデナーは植えた花を、後で見栄えがよくなるようにバンバン剪定するんですよ。私は花たちが可哀想で、可哀想で……。はじめは切られた花たちを拾ってまわっていましたが、そのうちあまりに数が多いのでどうしようもなくなりました。そしたら、近くの庭をつくっていたフランス人が来て『捨てるんならください』と頼むのであげました。彼はちゃんとその花を飾ってくれたから嬉しかったです」。 「あのツクシイバラとナニワイバラは、もらった茎を挿し木して増やしたんですよ……」とノリちゃん。ここに来る途中の道端に咲いていた紫陽花も彼女が増やしたもの。大原を花だらけにしようと彼女は思っていかじやま・ただし/1959年長崎県生まれ。写真家。山岳写真など、自然の風景を主なテーマに撮影している。登山ガイドブックほか共著多数。84年のヒマラヤ登山の後、自分の生き方を探すためにインドを放浪し、帰国後まもなく、本格的なインド料理レストラン「DiDi」を京都で始める。妻でハーブ研究家のベニシア・スタンリー・スミスさんとはレストランのお客として知り合い、92年に結婚した。PROFILEるのだろうか? 「このハーブはベルガモット、ルー(ヘンルーダ)、エキナセア、レモンバーベナ、アップルミント……。これはイブキトラノオとカワラナデシコ、ワレモコウ、リンドウ。あっ!このミズヒキは斑入りなんです」。ハーブだけでなく山野草も彼女の好みとか。「あそこの大きなススキは西洋ススキで、この柚の木は私が生まれる前からあるようです。このボタンヅルと野ブドウは勝手にこのゲートの上を這っているんですよ」。 ノリちゃんの植物の説明を聞きながら見ていくうちに、最初に受けた印象が変わっていることに気付いた。ノリちゃんの植物との関わり方を僕が理解できなかったということだろうか。はじめはカオスに見えていた草むらが、ノリちゃんと植物の秩序に基づいてつくられた「秘密の花園」に見えてきた。「秘密の花園」にカワラナデシコのピンクの花が咲き乱れていた。中央奥に植えられた巨大な西洋ススキが、花園の番人の貫禄を見せている。右:ベルガモットの花とクマバチ。 左:イブキトラノオ。

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