雑誌「チルチンびと」79号掲載 京都大原の山里に暮らし始めて

ようやく我が家にも下水道がきた

大原には下水道が設置されておらず、家庭排水が高野川に垂れ流しになっている話を本誌71号(2012年春号)で書いた。この地へ引っ越してきたとき「すぐに下水道が来るよ」と町内の人びとから聞かされて18年。ずいぶん長く待たされたが、昨年秋にようやく我が家の前の道路に下水道の排水管が埋められた。 11月に入ったある日、「すぐに下水に繋ぐ工事をやってもらいましょうよ」とベニシア。僕は春まで待って、暖かくなってから工事を頼めばいいと思っていたが、彼女はそうではなかったようだ。「夜中に、今のトイレまで行きたくない。目が覚めて眠れなくなるから」とベニシア。実際、2階の寝室から1階の北の端にあるトイレまで結構距離があるし、冬はかなり寒い。ベニシアは寝室から近い位置に、早く水洗トイレが欲しいという。早速、ベニシアは橋本勝工務店に電話をかけた。3年前に屋根瓦葺き替え工事を依頼した工務店である。 数日後、工務店のボス橋本さんが改築工事の話にやって来た。「排水管が通るラインにできるだけトイレ、風呂、キッチンなど水回り関係を集中させる方がいいですよ」と橋本さん。「できれば、年内に新しいトイレと風呂が欲しいです」とベニシア。 そして、僕は……というと、この10月でようやく18年間の住宅ローンの返済を終えたばかりだ。それで、これからもっと自分の好きなことをやれるだろうと思っていたのに……。再び、家の改築のためにお金を借りて、そのローン返済が始まるという現実的なプレッシャー。 京都市上下水道局の告示によると、下水道が整備されると3年以内に水洗便所に改造することが下水道法により義務づけられている。3年以内にやらなければならないなら、今直ぐにやっても同じではないか。「まあ、仕方ないなぁ」と思いつつも、翌日にはローンの申し込みに銀行へ足を運んだ。 こうして、12月に入ってすぐに工務店や水道工事、電気の配線工事、左官さんなど毎日、たくさんの職人さんたちがやって来た。「最も大変だったのは、古い風呂の解体でした」と橋本さん。これまで使っていた風呂は、さらに前の古い風呂の上に作られていたようで、風呂の床を固めていたコンクリートが2層になっていた。そのため、そこを解体して出た残材などが、土のう袋で310袋、2トンダンプで2台半もの量があったそうだ。他には、移動したり外したい柱や梁が、家の構造や強度、傷み具合の関係で外せない。それらの問題で、欲しい位置にユニットバスが設置できないとか窓が作れないなど、現状に合わせて妥協しなければならない箇所が多々あった。実際に解体して、見てみないとはっきりとは分かりにくい古民家改築工事の難しさがあったようだ。 * 京都市の下水道の普及率は99%以上だが、大原では約2年前から下水道排水管の配管工事が始まった。そして、来年までに大原の約500軒の家のほとんどの配管工事が終わるそうだ。とはいえ、家の前に下水道排水管が来ても、家からそこに繋ぐ工事は各家の経済的負担になる。現在、下水道排水管が家の前の道まで来たことにより、家の排水管からそこに繋ぐ工事を終えた世帯は約7割で、あとの3割の世帯は、そのうち……と考えているらしい。 下水道排水管工事のため、大原に住む1世帯が京都市に払う金額は27万円。そして、家から排水管へ繋ぐ工事の平均額は40〜50万円だそうだ。この機会に思い切って、我が家は風呂とトイレも作り替えた。僕は再びローン返済の生活に戻ったが、今では我が家の全員が、風呂とトイレに行くのが日常の楽しみのひとつとなっている。ようやく我が家にも下水道がきた右/新設した水洗トイレ。床と腰板の木材は杉。洗面台の棚は、樹皮の部分がカーブした根に近い部分の檜。壁は珪藻土と藁の混合。 左/洗面所と風呂。風呂は橋本さんのすすめにより、水分や湿気を外部に漏らさないユニットバスを設置した。8

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