雑誌「チルチンびと」67号掲載 京都大原の山里に暮らし始めて
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青々と稲が育つ田の畦道を散歩するベニシア。大原の田畑は、盆地中央部の日当たりのいいところに広がり、集落はその隅の山裾に集まっている。 梅雨の晴れ間に、大原北西の大 見尾根から流れ出る陸地谷(お かちだに)を歩いてみた。谷の 下部は杉植林地だが、上部は思 いのほか雑木林が多かった。谷 に転がる大岩の上にも、木が元 気よく根を下ろしていた。 座敷から眺めた我が家の庭。白 いアナベルと黄色のキンシバイ、 紅色のモミジと鮮やかな緑のコ ントラストが美しい。 ゼラニウムやナスタチウムの花を咲かせ、ス ペイン風にデザインした裏庭。写真左のテー ブルのような台は井戸。   大原で暮らして2カ月後には、家中に灯りがついた話を前号で書いた。 順番通りに行くなら次は水道だが、 今回はおくどさんの話をしよう。 かまど   京都では竈をおくどさんと呼んで いる。京ことばでは、生活と関わり の深い名詞に「お」と「さん」を付 けるケースがある。例えば「おあげ さん(油揚げ)」とか「おひがしさん (東本願寺)」など。「おくどさん」 くど は「竈」に「お」と「さん」を付け たものだ。   この家に初め て来たとき、吹 き抜けの土間に ある、おくどさ んに驚いた。貫 禄があり美しい。 直 径 センチも の大鍋を火にか

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