雑誌「チルチンびと」 脱原発のために私たちができること「ドイツ、スイスに学ぶ脱原発都市の実践」
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上/ドルナッハ遠景。 右下/ゲーテアヌ ム後方に広がるバイオダイナミック農場。左 下/町のシンボル、ゲーテアヌム。 は、戸建の家はもちろん、ほとんどの住居 の地下にケラーと呼ばれる地下倉庫と、厚 く頑丈な扉のついたシェルターが備え付け られている点だろう。  スイスは永世中立国だが徴兵制度があ り、緊急時への備えや心構えはしっかりし ている。他国による侵攻や核攻撃に備えた 地下シェルターは、日常的には物置だが、 避難生活を送るための暖炉や寝具、保存食、 水等が用意されている。  自家菜園の手入れを夕食後の日課にして いるマリオン・アンマンさんによれば「こ こ5年くらいに建てられた家にはシェル ターがないところもあるけど、また戸別の シェルターを備える家が増えるのではない かしら」とのこと。マリオンさんも保存食 の備えは万全のようだ。 有機的フォルムのエコハウス  ドルナッハにはスイスの伝統的な建物が 多く残っている。その一つですでに触れた ゲーテアヌムは、1920年代に完成し て、今や町のシンボルにもなっている。独 特の建築様式は、周辺に建つ多くの建物に 影響を与えている。これらは「有機的フォ ルム」と評され、同一のものは一つもなく、 建物同士が呼応するかのように配置されて いる。しかも景観を乱すことなく、自然環 境やコミュニティ生活との調和を見せてい る。日本では建築家今井兼次が1926年 に訪れ国内に紹介したことで知られるよう になった。  ゲーテアヌムにほど近い住宅街に、この 伝統的な建築様式と近代的な工夫が融合し た5棟のエコハウスが並んでいる。  地元の建築家クリスティアン・グラー ザー氏が設計し、1994年に完成した。 どの棟も地下1階、地上2階、屋根裏部屋、 ガレージ、そして庭で構成され、すべての 庭が果樹木や野菜、草花で覆われている。 グラーザー氏はミツバチの生態を研究して おり、建物全体もミツバチの巣をモチーフ に多角形の平面にしている。この形状は通 常の箱型の建物よりも、揺れのエネルギー を拡散できるということで、耐震構造の機 資料請求番号7319

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