雑誌「チルチンびと」 脱原発のために私たちができること「ドイツ、スイスに学ぶ脱原発都市の実践」
10/10
199
上/エコステーションの外観。鳥や虫たちへのお返しとして屋
上が完全に緑化されている。 右/エコステーション付属のビ
オガルテン。市民が共同で手入れしている。 左/エコステー
ションを見下ろす。緑化された屋上とピラミッド型の採光窓。
中/エコステーション内部。丸太を組み上げて屋根をつくって
いる。ピラミッド型の採光窓からやさしい光が差し込む。 下
/エコステーション付属のビオガルテン。
※記事を執筆したエコ・フライヴィリヒは、ドイツ・フライブル
ク市に集まる日本人留学生や実習生からなるグループで、環境問
題全般に取り組んでいる。シェーナウ電力の軌跡をまとめたDV
D『シェーナウの想い』の日本語版作成を手がけた。
環境都市の象徴 エコステーション
環境保護ネットワークの要と、その周辺に広がるビオガルテン
5
主な参考資料:
http://www.biosolarhaus-freiburg.de/referenz/
projekte/oekostation.html
補足:
ドイツ環境保護連盟 BUND Bund fur Umwelt
und Naturschutz Deutschland
エコステーションOkostation ( 環境保護ステー
ション)
ビオガルテン Biogarten ( 有機栽培による庭園)
ライン川の汚染や酸性雨による森林破
壊、大量の廃棄物、そしてチェルノブイリ
原発事故の影響が深刻さを増した1980
年代ドイツ。市民の環境問題への意識が高
まり、さまざまな環境保護への取り組みが
本格化する中で誕生したのが、フライブル
ク市内にあるエコステーションだ。
これは、環境教育と環境保護ネットワー
クづくりを主な活動とする施設で、自治体
とドイツ環境保護連盟BUNDとの協働で
1986年に設立された。児童向けの生物
多様性をテーマにした体験学習などを中心
に、年間を通して多角的にプロジェクトを
発展させている。
カール・ペーター=ムーレ氏デザインに
よる建物は、アメリカ先住民ナバホ族の住
居“ホーガン”をモデルにしたもので、自
然環境と人間生活の調和への願いが込めら
れている。建築材料にはすべて地元産の天
然素材を使い、サンルームや窓の配置など
が綿密に計算された、低エネルギー設計と
なっている。
市民の手で大切に育まれている付属のビ
オガルテン(有機栽培による庭園)では、
季節の草花や薬草の学習を楽しむことがで
きる。フリッツ・ティーアさんは、このビ
オガルテンで
22
人のお弟子さんを育てあげ
た経験を持つ、庭園づくりのマイスターだ。
そのフリッツさんが、コンポストの手入れ
をしながらこう語ってくれた。
「この庭園は大自然のもつライフサイクル
の縮図。芝生だけのグリーン砂漠でも虫の
寄らない庭でもいけない。あらゆる生物が
共存し循環するようにつくり、そのすべて
を皆で共有することが大切。私たち人間
も、これに還って行くのだから」
元のページ