雑誌「チルチンびと」 脱原発のために私たちができること「ポスト3・11時代の住まいの暮らしとエネルギーの関係」
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188 や、小鳥や昆虫が訪れる庭、風をひんやり とさせるクールスポットなどと、それらを 室内から楽しめる開口部のあり方などを工 夫します。その上で、室内の形状や使われ 方にあわせた暖冷房設備を選択・設置しま す。空気を温めるのか、床面や壁面を温め るのか、連続的に温めるのか、必要なタイ ミングで温めるのか、より効果的かつ効率 的な手法を選択する必要があります。同じ く電力を消費する機器でも、たとえば電気 温水器や電気暖房機のように電力を単純に 熱に変えて使用する機器は、ヒートポンプ 式の機器に比べ、何倍もの電力を消費して しまうこともあります。 Ⅲ.電力以外のエネルギーへの代替  原子力発電による電力にいかに頼らない ようにするかを考えると、購入する電力を 他のエネルギーに置き換えるという方法も 考えられます。  前述のめざす快適性の目標設定と達成手 段を組み替えることも、その取り組みの一 つではありますが、もっと直接的に他のエ ネルギーに代替することも可能です。  家庭で使用される電力消費機器のうち、 テレビやパソコンなどの機器は、他のエネ ルギーでは動かせませんが、暖房設備や給 湯設備、調理器具などは電力消費機器でな くとも、都市ガスや灯油などを使う機器に 置き換えることができます。太陽熱を暖房 や給湯に利用することも、購入電力の代替 と考えられます。  また、家庭用燃料電池システムや太陽光 発電システムを住宅に設置することによ り、電源を購入電力から都市ガスや太陽エ ネルギーに置き換えることも可能です。  逆に電気自動車は、エネルギー源をそれ までのガソリンから電力に置き換えること になるので、電力消費量を増加させること になってしまいます。  太陽光発電システムにより発電された電 力で十分に充電できるようになるなどの条 件が整わないと、電力消費量の削減の妨げ になる可能性があります。 Ⅳ.一時的な電力供給制限への備え   今後、太陽光発電や風力発電等の電源比 率が高まった場合の課題として指摘されて いる点に、電力の供給量が需要量を瞬間的 に下回ってしまう可能性があります。この ような事態を回避できるような供給システ ムの構築が必要ではありますが、個々の住 宅側でも備えが必要になります。 ①需要調整を受け入れる  需要量が供給量を瞬間的に上回ってしま う可能性が高まった場合、需要量を削減す る必要があります。そのためには、電力消 費を制御するための「スマートメーター」 や、電力消費機器の稼働状況を制御する「ス マート家電」等を受け入れることが求めら れます。  スマート技術とHEMS(ホーム・エネ ルギー・マネジメント・システム)の組み 合わせは、住まい手自ら電力消費を管理し やすくすることに加え、住まい手に効率的 な環境調整方法を伝えてくれる役割も期待 されています。 ②住宅単位で「蓄電」する  住宅に太陽光発電システム等を設置した 場合、発電した分を常に自分で消費してい るとは限りません。  日中には室内に人がおらず、発電電力が そのまま逆潮流されていることも多いと考 えられます。 住宅の仕組みを変えることで省エネをめざすパッシブ・デザインの基本的な考え方(図案/岩村アトリエ)  

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