雑誌「チルチンびと」 脱原発のために私たちができること「ポスト3・11時代の住まいの暮らしとエネルギーの関係」
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184 原子力発電に依存しない暮らしを実現するためには、何 が必要なのか。電力需給の観点と暮らしの観点の両面か ら、今求められていることを解説する。 原子力発電をめぐる 現在の状況 ポスト3・11時代の 住まいの暮らしと エネルギーの関係 将来の電源構成の選択肢 三井所清史 従来の電源構成の考え方/資源エネルギー庁第11 回基本 問題委員会(平成24 年2月9日)配布資料より 3.11 以前の時点で、温暖化対策の観点から、2030 年 には節電対策による電力需要の伸びの抑制の上、再生可 能エネルギー等の発電比率21%、原子力による発電比 率53%が示されていた。すでに再生可能エネルギー等 発電比率の倍増が求められていたことがわかる。今後、 53%を占める原子力分をどう補っていくのかが課題。 1.原発事故が引き起こした本能的な怒り と恐怖と疑念  2011年3月 11 日の東日本大震災を きっかけに発生した原子力発電所の事故以 降、今後の電力・エネルギーのあり方、と りわけ原子力発電の扱いが問われ続けてい ます。2012年6月末には、政府より将 来の原子力発電所への依存度についての三 つの選択肢を中心とした今後の我が国のエ ネルギー・環境政策のあり方の案が示され、 国民的な議論の上、方向性を定めることと されています。しかし、現時点において、 国民全体での合理的な議論が行われる状況 にあるとは言えないのが現実です。  その根源的な原因として、今回の原子力 発電所の事故およびその後の対応について、 多くの人びとが本能的な恐怖と疑念と怒り を持ってしまったことが考えられます。事 故の結果、多くの人びとが多かれ少なかれ 被曝したこと、また、居住できなくなって しまった地域が発生したことは、多くの人 びとに原子力発電に対する恐怖を呼び起こ しました。  また、事故直後、「今回の津波は想定外 だった」としたにもかかわらず、少なくと も近年には巨大津波の可能性が指摘されて いたことが判明したことなどは、政府や電 力会社に対する国民の疑念を生んでしまい ました。  そのような状況の中で、「安全性が確認 された」と大飯原子力発電所の再稼働が決 定されることに、自らが抱える恐怖と疑念 を踏みにじられたという怒りを感じている と思われます。 2.将来の電源を検討するための論点  将来の電源構成の方向性を定めるために は、このような国民の本能的な感情を踏ま えつつ、より冷静で、合理的な議論も必要 となります。将来の電源構成のあり方を決 めるための論点を、筆者なりに整理してみ ます。 Ⅰ.電力の供給力をどのように考えるか  減原子力発電・脱原子力発電を実現する ためには、少なくともこれまで原子力発電 により供給されてきた電力量を代替する必 要があります。対策の方向には、①原子力 以外の電源(火力発電、再生可能エネルギー による発電)によって代替する方向と、② 電力消費量そのものを削減する方向の二つ が考えられます。さらに②については、節 電による削減と、電力以外のエネルギーに 転換することによる削減が考えられます。  

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