雑誌「チルチンびと」 72号掲載 人を生かし風土を生かす家づくり 福島編
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挨拶を交わす葛尾村の入居者。お年寄りの住宅にはスロープがつけられている。 通路を挟んだ棟の開口部は向かい合わせになっている。 移動マーケットが生活物資を売りにやってくる。 集落の全景。 左/掲げられた幟 には「絆」の文字が揺れる。  福島県田村郡三春町。この町は、日本三大桜の三春滝桜で知られ、開花の時期には30万人もの見物客を集める。訪れた3月は春まだ浅く、山あいに梅花が咲くにとどまる。  静かな景色の中、開けた土地には鈍色をしたトタンの仮設住宅が連なる。しかし、訪ねた過足寺ノ前まえという集落では、少し変わった木造の仮設住宅が並ぶ。ここには、原発事故で計画的避難地域となった葛尾村の方々が暮らしている。  震災後、福島県は約1万4000戸の仮設住宅を設営。そのうち1万戸余については、県と災害協定を結ぶ.プレハブ建築協会が設営したが、3500戸分は県産の木を使った木 造仮設住宅である。そのきっかけをつくった一人が、郡山市に本社を置く㈱増子建築工業社長の増子則雄さんだ。「新潟県中越地震で仮設住宅設営の手伝いに参加した時から、プレハブじゃなくて地産材を使えば地元も潤うし、雇用も創出できるのにと思ってたんだ。それで今回、国や県に声をかけたのさ」と増子社長。 同社は186戸を担当した。  木造仮設が高く評価されたのはその居住性の高さにもある。木造仮設

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