雑誌「チルチンびと」 脱原発自然エネルギー時代の家づくり
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地震による揺れが大きな場所は、活断 層の直近や地盤条件の悪いところです。 また、活断層の直上では地表の変位に 伴う被害も発生します。活断層のある場 所については「都市圏活断層図」という 地図で調べることができます。インター ネットでも公開されていますし(http:// www1.gsi.go.jp/geowww/bousai/ menu.html)、大きな書店でも入手する ことが可能です。神奈川県横須賀市のあ るニュータウンでは、住宅団地の造成に 際して、活断層の真上を緑地にして、地 表の変位に伴う被害を未然に防ぐ取り組 みが行われています。こうした取り組み も、活断層の場所を事前に知ることが不 可欠です。また液状化の可能性もある 地盤条件が悪いところ、土砂災害にな りやすい 大規模な 盛土が行 われた場 所などは 「土地条 件図」と いう地図 で知るこ とができ ます。こ の地図も 国土交通 省ハザー ドマップ ポータルサイトから見ることができます。 さらに古い写真や地図を使い、自分の 住む、あるいは購入を検討する土地の過 去の条件を直接見ることもできます。 「国土変遷アーカイブ空中写真閲覧 (http://archive.gsi.go.jp/airphoto)」 では、第二次世界大戦後以降に飛行機か ら撮影された全国の写真が公開されてい ます。古い地図(旧版地形図)はイン ターネットで閲覧することはできませ んが、誰でも郵送で購入することがで きます(http://www.gsi.go.jp/MAP/ HISTORY/koufu.html)。検討対象とし ている土地が、以前は水面だったり水田 だったりした場合、あるいは盛土である ことが予想された場合は、被害が大きく なることを想定し十分な準備をしておき ましょう。 *構造的に強い家を建てよう 住んでいる場所では強い揺れ以外の被害 が想定されていなければ、揺れに対して強 い構造の家を建てることで、被害を軽減す ることができます。 RC造にしたり、免震構造・制震構造 にすることができれば良いのですが、木造 家屋であっても、構造壁を多くし、壁には 「斜は す 交か い」を入れることで、地震動に強く なります。これは既存の家屋にも使える方 法ですので良いでしょう。自治体によって は、木造家屋の耐震化に補助金を出して いる自治体もありますので、確認をしてみ るといいでしょう。 店舗や駐車場のために、1階部分の構 造壁や通し柱を少なくする「ピロティ形式」 の建物も多いかと思います。この形式は地 震動に弱いので注意が必要です(写真7)。 *地震に強い住まい方をしよう 建てる場所を選ぶ、強い家を建てるこ とはとても大事ですが、簡単に引っ越す ことはできません。今、住んでいる家で 地震に備えるためには、地震に強い住ま い方をすることが必要です。これには、 さまざまなマニュアルがすでに出ていま すので、詳しくはそちらを参考にしてい ただければと思います。 比較的簡単に、しかも安価(無料?) ででき、効果が大きいのは、「寝室のレ イアウトを考える」ことです。 住居の中で、寝室は過ごしている時間 が最も長い部屋だと思います。さらに、 就寝している夜間に地震が発生すると、 十分な対応をすることができない無防備 な部屋でもあります。 寝ている頭の上に落ちてくるようなも のが置かれていないでしょうか? タン スや棚が頭の上に倒れてくることはない でしょうか? 寝る場所と家具のレイア ウトを考えて、頭へのダメージを回避す るだけでも、安全性が著しく向上します。 また、家具の固定ですが、活断層に近 い場所では重力よりも大きな加速度が作 用することがあります。家具の下に挟み 込む楔 くさび のような家具固定の道具も売られ ていますが、これでは浮きあがろうとす る家具の固定には役立ちません。多少不 便にはなりますが、壁に直接固定したり、 突っ張り棒で天井と固定するなどの方法 を選択してもらえればと思います。 災害は地震だけではない 今回は、東北地方太平洋沖地震が発生 した直後なので、地震に注目して文章を 進めてきましたが、日本列島は地震だけ でなく、洪水、土石流、火山噴火など、 さまざまな自然災害が発生する場所で す。まるで災害のコンビニエンスストア とでもいう状態です。こうした災害に対 しても「災害にあう可能性が最も低い場 所に住む」ということがいちばん基本的 な対応策になります。「国土交通省ハザー ドマップポータルサイト」には、洪水、 高潮、土砂災害、火山のハザードマップ も掲載されています。こうしたハザード マップも参考にしながら、自分が住んで いる・活動している地域で想定されてい る災害を理解しておくことが重要でしょ う。この文章が、これから家を建てたい 人の役に立つとよいと思っています。 青木賢人(あおき たつと) 金沢大学地域創造学類環境共生コース准教授。専門 は自然地理学。2004年福井水害、2007年 能登半島地震、2011年東日本大震災など、自然 災害を調査。 写真7 石川県輪島市門前地区。ピロティ形式の木造家屋 の被災状況

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