住宅雑誌「チルチンびと」71号掲載 設計 大野 正博
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「木が目立ちすぎる部分は隠すが、 気にならなければ素直に現す」と、 設計者の大野正博さん。リズムよく 並ぶ柱は、空間に凛とした雰囲気を もたらしている。  目を引くのがキッチンの天板と一 体化したダイニングテーブル。キッ チン部分の床が下がっていて、掘炬 燵式のテーブルに座った人と、キッ チンに立つ人との目線が合うように 設計されている。棚や建具は、床か ら測ったテーブルの高さ230ミリ を基準に、その倍や半分の高さで造 り付けに。また、食器棚や地袋の戸 は、梁のピッチに合わせて割り付け られており、視界に入る縦と横の ラインが揃って見える。「こういう ところがきれいに揃っているほうが、 無意識に居心地のよさを感じるもの です」と大野さんは言う。  また大野さんは、ベッドサイドや トイレには時計や一輪挿しが置ける 棚を必ず付ける。「これは少々デザ インが崩れても付けます。生活上、 要るものは絶対に要るのさ」と呵々 と笑う大野さん。整然としたルール の上に、住む人のことを考えた工夫 を“トッピング”する。この心遣い とやさしさが大野流だ。 暮らしは劇的に面白く  山口邸の敷地は、もともとご主人 の生家があった場所。結婚後はマン ション暮らしをしていたが、お父さ んの突然の逝去の後、お母さんとの 同居を考えたのが家づくりのきっか けだった。  何はなくとも展示場と、夫婦で多 くのモデルハウスを見て回り、ある ハウスメーカーとは契約寸前まで話 を進めていたそうだ。しかし、「メー カーは、要望をすべて聞いてくれる 浴室。バスコートを眺めて湯に入るのが至福の時とご主人。 上/2階パソコンスペース。 下右/子供室。 下左/2階廊下は本棚にな った。 左/2階から玄関を見る。トップライトやガラス欄間で明るい。  

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